第903回 原体験教育研究会例会 2013/06/14


 ★第903回 例会報告

参加者:山田先生,泉さん,中永さん,梶原さん,高田(要)さん,高田(昌)さん,Tedさん,藤田さん,城さん(&奥様),江口さん,菅野さん,甲賀さん,坂井さん,油井さん,高相

 

☆自然観察の要

■アゲハチョウの羽化観察会

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授業は終わったのですが,アゲハの羽化直前の冷蔵蛹が余ってしまいました。急遽,高相さんに依頼して,羽化観察会を催すことになりました。お陰さまで,多くの院生さんに羽化の瞬間を体験してもらえました。うっかり冷凍していた蛹以外は皆さんの目前で無事に羽化しました。意外だったのは,加温は30℃までと言っていたのに,32℃にまで加温してしまった蛹が,予定の35分前後よりもっと早い20分ほどで羽化したことです。もう20年ほど実践していますが,目から鱗でした。多くの人が集まると,新たな発見があってありがたいです。羽化したチョウは,ハンドペアリングに挑戦したいという江口さんにもらわれていきました。

高田さんのこの実践は何度見ても感動です!聞くところによると自分の小さい頃の感動体験を子ども達に伝えたいとの思いからだそうですが、これを見せてもらえる子ども達は幸せだと思います。羽化の瞬間だけでなく、学校のプールから懸命に壁を這い上りやっと羽化して太陽を浴び体温を上げようとしているところを次々とツバメ等に捕食されるたくさんのトンボなど理科・総合科・道徳の要素を含んでいます。原体験の看板実験ではないでしょうか。「プロフェッショナル仕事の流儀」ともいうべき実践です。

 このノウハウを次代を担う院生さんに是非受け継いで欲しいと思います。

 

暴れるオオムラサキの蛹←動画,蛹の尾部のフック

CIMG4135P1030788オオムラサキフック

 

 

 

 

 

兵庫県版道徳副読本「心きらめく」にオオムラサキを扱った教材があります。その中で蛹が動くという子どもにとっての意外な事実が,心の変容をもたらします。しかし,それを体験できる兵庫県の小学生が何人いるというのでしょう。そこで,蛹は動かないと思っていた?皆さんに体験してもらいました。思わず声が出るほどの驚き体験になりました。蛹になる前の前蛹は,2本の糸と尾部の糸がらみで体を固定しています。そこで不思議なのは,このように尾部が固定されているのに,最終の脱皮した皮は,どのようにして脱ぐのかという点です。そのマジックの秘密のヒントは,マジックテープでした。 こんな人工的な物が蛹になったとたんに生えてくるなんて,摩訶不思議です。

 

■タンボコオロギ(イチモンジコオロギ)

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「今,田んぼで鳴いているのは・・・」という要さんの切り出しに耳を疑いました。コオロギが鳴くのは秋でしょ。フタホシコオロギならまだしも,普通のコオロギはまだまだ幼虫でしょ! ところが,ケースの中でも立派に鳴いていました。成虫です。しかも,交尾まで。メスの尾部には精囊(精子の入った袋)がくっついています。子どもには,コオロギやバッタのほとんどは卵越冬で,たまに成虫越冬(ツチイナゴ)もいるよと教えていたのに。幼虫越冬するタンボコオロギなどもいるよと,またまた訂正です。

 

■トノサマバッタ

P1030821これまた意外!! まだ6月中旬なのに,翅の伸びきった成虫です。いくら早くても成虫になるのは盛夏でしょ! やや小振りの成虫を目の当たりにしても信じがたい私でした。温暖化?認識不足?

 

 

 

■オカメテントウムシ

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これは値打ちがあります。子どもにも人気が出そうです。「大きいことはいいことだ』これだけ大きいと,甲虫の仲間だと感じられますね。

 

■ある甲虫の同定方法

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廊下を歩いていた甲虫を同定しようとインターネット検索。昆虫を見慣れている人ならすぐカミキリムシの仲間と分かるのですが,苦手な人はどういうキーワードで検索しますかという問いかけです。「昆虫エクスプローラー」http://www.insects.jp「虫マトリックス」http://www.insects.jp/konmit.htm が使えそうです。しかし,この個体はミドリカミキリだと思われますが,上面は茶色がかっています。色に個体差がある場合は,同定に迷います。

 

■童謡「カタツムリ」

「つのだせ,やりだせ,めだまだせ」という歌詞は,山田先生によると,実に鋭い観察眼による作詞だったのです。「目玉」はわかっても「つの,やり」が何を指すのか,正しく解説できる人はいませんでした。「大きい角の下に小さい角があった」というテッドさんの記憶が一番マシ?でした。大触角と小触角があるんですね。そして「やり」は「恋矢(れんし)」すなわち,雌雄同体であるカタツムリのオスとしての生殖器です。それを互いに刺し合って同時に受精するというお話でした。

 

ツバメのひな←動画

ツバメのヒナがお尻をフリフリしながら突き出して,フンを確実に巣の外に落とすスロー動画を見てもらいました。また,親が一番大きく口を開けているヒナにエサを与えるのかどうかという場面も。短い動画では一概に言えませんが,みんな同じように育っているので,結果的には均等にエサをもらっているのでしょうね。

 

■ナガサキアゲハの終齢幼虫

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温暖化の影響は,昆虫達の生息域の変化にも現れてきます。南方系だったツマグロヒョウモンやナガサキアゲハが普通に見られるようになりました。巨大な幼虫は存在感があります。いずれ,羽化の瞬間を観察してもらいましょう。

 

■イモリの足

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実物を見たのは初めてなのでありがたいですね。「ヤモリの足先は吸盤になっている」が常識なのではないでしょうか。あにはからんや,双眼実体顕微鏡で見ると,鋭い爪とヒダヒダでした。その先にナノレベルまで細かい毛が密生しており,原子や分子間に働くファンデルワールス力によって接着するといいます。ナノテクで最先端の「ヤモリテープ」が開発されたとか。自然に学ぶこといと多し。

 

☆Gentaiken Teachers Labo

■円盤脳トレ

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今年からNHK教育テレビで始まった「考えるカラス」という番組があります。これがなかなかの番組で、いつも感心しながら子ども達に見せています。これは、「逆から考える」という発想方法を考えさせる課題です。10個の金属板を矢印の形に並べ3個だけを移動させて逆方向を向かせるというものです。難しい課題が「逆から考えると・・・」あら不思議・・・簡単に理解できます。「ヒトは考え方を手にいれると賢くなる!」は同テレビの別番組のキャッチフレーズですが、まさに「考え方」へ挑戦している課題です。

 

■キックディスク

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以前,ジャパンなどで購入できたキックディスクは,下方へ吹き出す風でわずかに浮上するので,無摩擦加速度運動を再現するのにうってつけのサイエンスグッズです。小学校では,軽く蹴り合って遊ぶだけでも値打ちがあるのではないでしょうか。蹴り過ぎは破損の元ですが。

 

☆From School

■新任,現場を語る

藤田今年から新任として現場に着任した藤田さんが,生の声を後輩の院生さん達に届けました。学級の児童の実態や保護者への対応,学年集団との関わり,勤務時間などに対するポリシーなどを質疑応答を交えて語ってくれました。中永さんから,確かに楽ではない現場の状況だが,クラス数が多いので,同僚から教われる環境をありがたいと思わなくてはならない。なぜなら,小規模校で単学級だと,熱い思いがあっても育たずじまいになりがちである。また,教師は3つのために働かなくてはならない。子どものため,保護者のため,そして同僚のために働くようにというアドバイスがありました。

それにしてもこの頃の例会の充実ぶりはどうでしょう! 人数的に部屋にも入りきれず、内容もバラエティにとんでいます。それぞれの実践報告を大事に検討しつつさらなる充実をめざしていきたいところです。

実は中永はこの翌日某所で朝早くからガードマンのアルバイトをされている院生さんと遭遇。3年間の院生生活は楽ではないと思いますががんばって教職についてほしいと願わずにはいられません。原体験例会もその一助になればと思います。

 

 

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