動物病院日記 「ハヤブサとトビの入院」


この時期は、鳥たちの巣立ちの季節。

まだ、一人前でない幼鳥は飛び方もぎこちないので、何かとトラブルに巻き込まれやすいのでしょう。毎年、フクロウやツバメなど傷ついた野鳥を受け入れます。

 

今年は、どういうわけかハヤブサが次々と運ばれてきます。6日前からトビが加わり・・・

連日、彼らの給餌に追われています。トビは雑食性?と思われるほど何でも食べるそうですが、幼鳥ということもあり、まだ、置き餌を食べることもせず、股関節や腕を骨折していて、もちろん、生きた獲物を狩ることもできません。

仕方がないので、ニワトリの肉を小さく刻んで与えました。ピンセットで喉に押しこむ強制投与の数日を経て、ようやく、自らが肉を咥えて飲み込むまでになりました。

野生の鳥の治療は、実はエサの管理が一番気を遣うところ。成鳥では、人の手を拒み、いつまでも強制給餌ということもあります。強制的にと言うことは、誤嚥(誤って気管支に入る)性気管支炎や肺炎の危険性がありますし、食べ過ぎて具合が悪くなる可能性も考えなければなりません。

幸い、今回は幼鳥ですので、警戒心が薄く、数日でエサを受け付けるようになりました。今後は、むしろ、濃い関わりを持たないように気を付けないと、傷が癒えた後の野生復帰が難しくなります。

・・・ということで、みなさんにご覧いただきます。ハヤブサとトビ。トビはレントゲン画像も。

 

 

 

 

 ちょっと見る限り、幼鳥のあどけなさもかいま見えて・・

つい、うっかり近づき過ぎると、鋭い嘴(くちばし)の攻撃を受けることになります。さすが猛禽類。彼らの視界に入ると、文字通り痛い目に合います!

 

治療や、糞の処理をするときは、後ろから、そっと抱き上げ移動させます。また、仰向けにすると、ほぼ無抵抗ですから、こちらの腕やピンセット等の医療用具が、彼らの視界に入らない限り、じっとしています。

ちなみに、体重1,2キロ。上から見ると、羽を閉じた状態で40センチ角の薄いクッション大。結構大きく感じます。

トビの前に置いてあるのは、直径7~8センチの桜の枝です。止まり木ですが、股関節を損傷していて、まだ自分で止まることはできません。鋭い爪は、ぎゅっと閉じると、人の片手では開くことができません。この鋭い爪で獲物を捉えて空高く飛ぶことに納得です。

 

 

 

 

 

 これはハヤブサです。

喉元の襟巻き風の白い羽毛と青味がかった濃いグレイの縞模様が美しい鳥。

実は、私は、実物を見たのはこれが初めてです。

止まり木の上に置き餌の鶏肉をセッティングしましたが、残念ながら、うまくいきませんでした。結局、ピンセットで鶏肉をつまみ、目の前に突き出すようにして動かすと、“いきなりーっ?”って感じでガッツリ来ます。しかも、咥えた直後に半回転のドリルの動き。すごい力です。はぁ、こうして狩った獲物の肉をちぎり取るのだと実感します。

 

 

 

 ハヤブサの眠る姿です。

意外でしたね。猛禽類ですから、寝姿も雄々しいイメージでしたが・・・

白鳥などと同じ。頭をぐるりと回して肩?背中?に埋めるようにして眠ります。微笑ましい。

そうそう、ハヤブサの足は黄色いでしょ?トビは、青みがかった白です。爬虫類の苦手な私は、足のウロコ模様を見るとぎょっとします。あぁ、このものたちは爬虫類の親戚だわぁってね。

 

 

 

 上腕部?というのでしょうか?

どなたがご覧になってもポッキリですね。動かしても痛がる素振りはありませんが・・・人なら泣き叫びますよねえ。これ。

股関節の損傷は、お分かりになりますか?

 

 

 

 

*骨折の修復にピンが見えますが、これらは骨を貫通させて外に出し、数本にブリッジの形でセラミック固定しています。

ピンを内包すると、治癒しても羽が重くて飛べません。骨が再生すれば、外からピンを抜きます。切開せずにピンを挿入しているので、すこ~し隙間が開いてしまいましたが、この程度なら問題なく完治すると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

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