製鉄技術の忘れ形見〜かなくそ〜


私の出身地は兵庫県宍粟市千種町。原体験メンバーの横山さんがたびたび話題にされる千種川の源流域に当たります。千種町には、白亜紀から古第三紀にかけての花崗岩類が分布しているそうで、その風化した真砂から採れる砂鉄を利用して「たたら製鉄」が行われていました。「千種鉄」と呼ばれ、農具だけでなく備前系の数々の名刀にも用いられたと伝え聞きます。私の生家の屋号は「かないご」と言います。どうやら、これは「かなやご」が訛ったもののようで、私の父の子どもの頃には敷地内に「かなやご」の神様が祀られていました。「かなやご神」は「金屋子神」で、製鉄の技法を伝えた神様と言われています。

*「たたら」は、映画「もののけ姫」にも出てきましたが、もともとは、火力を強めるために炉に風を送る吹子(ふいご)を意味していました。やがて、製鉄の際の炉を覆う建物や施設全体を指す言葉になりました。

製鉄によって得られる不純物
「かなくそ」

千種鉄のたたら製鉄では、花崗岩類が風化してできた真砂を掻き取って水に流し、水底に沈んだ砂鉄を利用します。砂鉄を溶解すると比重の違いにより、不純物が上に浮いてくるのですが、この不純物を炉に開けた小穴から取り出します。いったん熱く溶けた不純物はやがて冷めて独特の質感の石のようなものになります。これが、少々品のない表現ですが「かなくそ」と呼ばれるものです。鉄を取り出したあとの不要物という意味の言葉です。同じ大きさの石と比較して少し重く感じますが、磁石を近づけても反応はないので、鉄分を含んでいないことが分かります。

たたら製鉄が、すっかり衰退して久しい今も、生家の敷地内のあちこちで「かなくそ」を見ることができます。邪魔者のイメージで気にもかけない「かなくそ」ですが、ふと、「ご存じない人もあるのでは?」と思い、紹介します。

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